ィリップモリス・ジャパンの加熱式タバコ「IQOS(アイコス)」ブームに火がついて、もうすぐ2年。同時期に登場したJT「Ploom TECH(プルーム・テック)」と、2016年末の宮城県仙台市限定発売を経て、昨年秋に全国発売にこぎつけたBAT「glo(グロー)」がラインアップに加わり、現状3つの加熱式タバコが市場に存在している。いずれも以前は入手困難なほどの人気だったものの、最近ではアイコス、グローはコンビニの店頭などで見かけることも多くなった。プルーム・テックも近々販売エリアを大幅に拡大するので、やっと機種選びが自由にできるようになりつつある。ここでは、3機種それぞれの特徴や、取り巻く現状について改めてまとめてみたい。
燃やさないから煙が出ない。スモークレスが特徴の加熱式タバコ
加熱式タバコは、従来の紙巻きタバコのようにタバコ葉に直接火をつけるのではなく、タバコ葉に熱を加えてニコチンを発生させる方式のタバコだ。燃やさないから煙は出ない。代わりに、タバコ葉に含ませたグリセリン類によって蒸気を発生させて煙の代替とする。
したがって、モノを燃やす時に発生するタールの量が9割以上減り、人体への悪影響が低減できるのが特徴だ。この「タールの悪影響低減」に関しては、さまざまな議論が巻き起こっているが、どれもニコチンを含むタバコなので有害なのは当然。それでも、従来の紙巻きタバコよりはマシなことは確かだろう。副流煙についても同様だ。しかも、紙巻きタバコは1度火をつけると常に発煙するが、加熱式タバコは吸っている間しか蒸気を発生させない。
こうした喫煙関連のリスクを低減する取り組みを、フィリップ モリス ジャパンは“ハームリダクション(被害低減) ”という考え方で訴えており、これはほかの2社2機種にも共通する。
どの機種も比較的入手しやすいレベルに到達!
2018年8月現在、3機種とも入手可能なレベルにまで需要は落ち着いた。供給が追いつき始めてネットなどでの転売価格が崩れたことで、転売目的購入が減ったのも追い風になったのだろう。さらに、プルーム・テックは今年3月19日に販売エリアを拡大予定。「プルーム・テック」スターターキット、および専用たばこカプセル5銘柄の販売エリアが、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、福岡県の5府県へ拡大した。 また、4月16日より順次、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、福岡県全域および札幌市、仙台市、名古屋市、広島市のコンビニエンスストアなどでも「プルーム・テック」スターターキットと、専用たばこカプセルの販売が開始されている。
ここまで到達するのに2年近く。随分と長い時間がかかったものである。入手が困難なことから切り替えを諦めていた喫煙者も、ここでもう1度考えてみるタイミングになるだろう。
加熱式たばこ3機種の特徴
ここからは、「アイコス」「グロー」「プルーム・テック」それぞれの特徴を改めて見ていこう。
フィリップモリス・ジャパン「アイコス」
紙巻きタバコからの移行でも不自然さを感じにくい、「タバコ感」最強機種
人によっては「ポップコーン臭」と呼ぶ、独特の酸味のある臭気は感じるものの、喫煙者が吸って1番違和感の少ないタバコ感を感じさせてくれるのがアイコスだ。「タバコ感」とは、ニコチンを含んでいるがゆえに吸い込んだ時に喉に感じる圧力=「スロートキック」。それが1番強いのがアイコスなのだ。ただし、味わいという点では明らかに紙巻タバコとは別だ。ブランドが「マールボロ」がゆえに、それを期待すると裏切られる。それでも、2017年3月に追加になった新味ヒートスティック「スムース・レギュラー」でだいぶ改善されたと感じる。
まずアイコスポケットチャージャーを充電し、そこからさらにアイコスホルダーを充電するという、まどろっこしい2段階充電方式を採用しているアイコス。アイコスホルダーに内蔵されたブレードにヒートスティックを刺し、内部から加熱する仕組みだ。1本吸うごとに3〜4分の充電時間が必要なので、連続で吸うことはできない。
専用ヒートスティックは、全9種類
加熱式タバコへの切り替えの可否を左右するのが、好みの味わいのカートリッジがあるかどうか。アイコスには2018年1月現在、レギュラー、メンソール合わせて6種類のヒートスティックが用意されている。メンソールが苦手で、加熱式タバコ特有のニオイもいやという人には「スムース・レギュラー」が現時点では最適解だろう。
なお、火を使っていないので吸殻は理論上は普通ゴミだが、ニオイがきついので、ゴミ箱に捨てるのはマナー違反となる可能性も。やはり灰皿か、密閉できる携帯灰皿などを利用することになるだろう。
BAT「グロー」
バッテリー一体型でチェーンスモーキング可能。洗練されたデザインも魅力
細身のカートリッジ(ネオスティック)を採用しているところから、アイコスほどタバコ感は強くないが、普段から「KENT」ブランドを吸っている人や軽めのメンソールを吸っている人に評判のいいグロー。本体の穴に専用のネオスティックを差し込み、周囲から240℃の高温で加熱する仕組みだ。バッテリー一体型なので、そのまま連続して吸うことができる(約30本分)というのが大きなメリット。
専用ネオスティックは全部で14種類と最多
グローは何と言っても選べるフレーバーが多いのが特徴だ。もはや、色でフレーバーを覚えるのも難しいほど。ただし異色な味わいがあるわけではなく、大きく分けるとレギュラータイプとメンソールタイプの2種。14種中9種がメンソールという、なかなか大胆な配分だ。
レギュラー派の筆者のイチオシは「リッチ・タバコ(深みのレギュラー)」。好みにもよるが、メンソールタバコという印象が1番強いのは「ダーク・フレッシュ(贅沢に香るメンソール)」である。
JT「プルーム・テック」
ニオイのなさはダントツ。無臭に近いが喫味はどうしても軽い
アイコス、グロー、プルーム・テックは3種とも同列に語られがちだが、実はアイコスとグローが直接グリセリン類を染み込ませたタバコ葉を加熱しているのに対し、プルーム・テックはグリセリン類を加熱して蒸気化させた後、微細に刻まれたタバコ葉を仕込んだタバコカプセルを通過させることによって、ニコチン入りの蒸気に仕立て上げるというかなり異なる仕組みとなっている。しかも、蒸気発生装置部分もタバコカプセルと同梱されているカートリッジごと交換するという仕組み。
実はこれ、もうひとつのタバコ関連ムーブメントとして人気急上昇中の、「VAPE(ベイプ)」と呼ばれるノンニコチン電子タバコが採用している構造とほぼ同じだ。加熱温度も、アイコス、グローが300℃レベルの高温加熱なのに対し、プルーム・テックの加熱温度は40℃以下と、最低温度での運用となる。これはメリットであり、デメリットでもある。
プルーム・テックのメリットは、高温加熱するとどうしても多少は出てしまうタール成分や、ニオイの問題がほぼないこと。アイコス、グローはおよそ9割の有害物質低減とうたっているが、プルーム・テックは99%低減と表明しているのはその違いである。その無臭ぶりは、隣の席で吸っていてもほぼ感じないほど。よくよく注意してもわずかにわかる程度なので、これがタバコなのかと驚く人も多い。使用済みのたばこカプセルも無臭なので、そのままポケットに入れても気にならない。
デメリットは、3機種の中でもタバコ感が1番軽いこと。スロートキックは控えめで、普段3~5mg程度の低タールタバコを吸っている人なら適度かもしれないが、それ以上の中高程度タールの紙巻きタバコを吸っていた人は物足りなく感じてしまうだろう。メンソールフレーバーを選べば、それなりにスロートキックも増加するが、それでもやはりマイルドだ。
まとめ
ここまで、3機種の特徴をまとめてきたが、それぞれの機種はどのような喫煙スタイルの人に向いているのだろう。まず、ある程度高タールの紙巻きタバコから移行するなら、アイコスだ。アイコス以上にタバコ感の強い加熱式タバコはない。できるかぎりニオイを抑えたいのであれば、ほぼ無臭の領域を実現しているプルーム・テックだ。そして、アイコスほどニオイが強いのはいやだが、タバコ感はそこそこ欲しいという中間地点にいるのがグローである。
また、徐々に体の負担を減らしていきたい(禁煙に近づきたい)というのなら、アイコス→グロー→プルーム・テックと移行し、最後にノンニコチンの「VAPE」に切り替えるというのも、コストはかかるが無理がない。自分に合った喫煙スタイルを見つけるために、まずは各取り扱い店舗で試してみるとよいだろう。